名古屋地方裁判所 平成3年(ワ)988号 判決 1992年4月17日
原告
金森史朗
被告
名古屋物流サービス株式会社
ほか一名
主文
一 被告らは、原告に対し、各自金一六二万二三八八円及びこれに対する平成二年九月二六日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その二を原告の、その余を被告らの各負担とする。
四 この判決は、一項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、原告に対し、各自金二六三万九三八八円及びこれに対する平成二年九月二六日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 交通事故の発生
(一) 日時 平成二年九月二六日午後七時一五分ころ
(二) 場所 名古屋市中区金山一丁目一〇番一二号先路上
(三) 加害車 被告会社保有普通貨物自動車(名古屋八八あ二八五六)
(四) 加害者 被告宮本
(五) 被害車 原告所有の普通乗用自動車(名古屋三三ほ五七一四)
(六) 態様 原告の運転する被害車が赤信号で停車中、被告宮本の運転する加害車に追突され、更に、被害車はそのはずみで前に押し出され、同じく赤信号で停車中の前車に衝突したもの
2 責任原因
本件事故は、被告宮本が前方注視義務を懈怠したために発生したものである。
被告宮本は、その使用者である被告会社の事業の執行中に本件事故を起こしたものである。
3 原告の損害
(一) 修理代 金一〇九万一三八八円
(二) 評価損 金一一四万八〇〇〇円
(1) 原告は、本件事故の直前に訴外有限会社日昭自動車商会との間で新車購入契約を締結し、同時に被害車を訴外会社に対し金三五〇万円で売却する契約を締結していた(下取り)。したがつて、本件事故前の被害車の評価額は金三五〇万円であつたというべきであるところ、本件事故により被害車の車両価値は金二三〇万円に減損したので、その差額の金一二〇万円が被害車の本件事故による評価損であるということができるのであるが、取敢えず、本訴ではそのうち金一一四万八〇〇〇円を請求する。
(2) なお、被告会社を代理する訴外峯地善春、同久保喜由と原告を代理する訴外金森政光間において、平成二年九月二七日、被害車の評価損につき、その売却予定価格であつた金三五〇万円と事故後の被害車の評価額との差額をもつて被害車の評価損とすることとし、被告会社は原告に対し、これを賠償する旨の合意が成立している。
(三) 弁護士費用 金四〇万円
4 よつて、原告は、被告らに対し、被告宮本には民法七〇九条に基づき、被告会社には同法七一五条に基づき、損害賠償金二六三万九三八八円及びこれに対する平成二年九月二六日から支払いずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実も認める。
3 同3の事実中(一)は認めるが、(二)は金三八万円の限度での評価損を認め、その余は否認し、(三)についても否認する。
4 同4は争う。
第三証拠
一 原告
1 甲第一ないし第五号証
2 証人金森政光
3 乙号各証の成立を認める(写については原本の存在も認める。)。
二 被告
1 乙第一ないし第四号証、第五号証の一、二、第六号証、第七号証の一、二、第八号証
2 証人峯地善春、同久保喜由
3 甲第二号証の成立は不知、その余の甲号各証の成立は認める。
理由
一 請求原因1、2の各事実は各当事者間で争いがない。
二 本件事故による原告の損害について検討する。
1 本件事故によつて損傷した被害車の修理代が金一〇九万一三八八円であることは各当事者間で争いがない。
2 被害車のいわゆる評価損について判断する。
原告は、本件事故の直前に被害車を訴外有限会社日昭自動車商会に金三五〇万円で売却(下取り)する契約が成立していたので、評価損算定の前提となる本件事故前の被害車の評価額を金三五〇万円とすべきであり、原告と被告会社間においてもそうすることで合意が成立している旨主張しているのであるが、証人金森政光、同峯地善春及び同久保喜由の各証言によると、原告は本件事故の直前に前記訴外会社との間で被害車を下取りに出して新車の購入契約を締結しており、そのときの被害車の下取りの査定価格は金三五〇万円であつたのであるが、その後の変更により、本件事故当時には下取りに出す車両を息子の金森政光が乗つているホンダアコードに変更されていることが認められるのであつて、予定していた下取りを前提とした右査定価格をもつて、直ちに被害車の本件事故前の評価額とみるのは相当ではないというべく、また、原告と被告会社間において、事故前の被害車の評価額を金三五〇万円とすることで合意が成立したとするに足る証拠もない。かえつて、成立に争いのない乙第四号証と弁論の全趣旨を総合すると、事故前の被害車の評価額は金二七五万円であり、本件事故による損傷の修理完了後は、事故により被害車の評価額は金三八万一〇〇〇円(前記修理代の約三五パーセント)減損したと認めるのが相当である。
3 本件事案及び審理の内容経過等の事情を検討すると、原告が被告らに対して賠償を求め得る弁護士費用は金一五万円とするのが相当である。
三 以上の次第によれば、原告の本訴請求は、金一六二万二三八八円及びこれに対する本件事故の日である平成二年九月二六日から支払いずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度において理由があるが、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用に負担につき、民訴法八九条、九二条本文、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 大橋英夫)